ピルはホルモンの配合量や用途により複数の種類に分かれています。
中でも中用量ピルは主に月経移動のために使用されることが多いです。
中用量ピルは低用量ピルよりもエストロゲンを多く含むため、高い効果に期待が持てる一方で副作用への懸念もあるので注意してください。
また、中用量ピルの服用により生理がこなかったり経血量が減ったりするケースも見受けられます。
本記事では中用量ピルの服用による生理がこない原因と対処法をはじめ、副作用のリスクも詳しく解説しています。
中用量ピルへの不安や疑問を解消するためにも、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも中用量ピルとは
まずは、中用量ピルに関する基本的な情報を解説します。
種類はプラノバールのみ
日本で取り扱いのある中用量ピルの種類は、プラノバールのみです。
以前はプラノバールとソフィアAの2種類が製造されていましたが、現在ソフィアAの製造および販売は中止されています。
プラノバールの相場は5,000円から8,000円ですが、月経移動や避妊目的の場合は保険が適用されない自費診療となるためクリニックごとに料金も異なるので注意してください。
月経困難症や子宮内膜症などの治療を目的とした処方の場合には保険が適用され、薬剤が三割負担になります。
服用方法
中用量ピルは生理を早めたいのか遅らせたいのかにより、服用する量やタイミングが異なるため注意が必要です。
中用量ピルを正しく使用するためにも、事前に服用方法を把握しておきましょう。
生理を遅らせたい場合
生理を遅らせたい場合には、生理予定日の5日前から生理を遅らせたい日まで中用量ピルを服用します。
正しく服用すると、任意の希望日まで生理を遅らせることができます。
中用量ピルを飲み終えたあとは、約2日から4日目に出血が起こるでしょう。
生理を早めたい場合
生理を早めたい場合には、生理予定日から5日以内に最低10日間中用量ピルを服用します。
正しく服用すると、生理を7日から10日早めることができます。
中用量ピルを飲み終えたあとは、約2日から4日目に出血が起こるでしょう。
低用量ピルと異なる点
中用量ピルは、生理周期の調整や避妊などを目的として用いられており、女性ホルモンであるエストロゲンの含有量が低用量ピルよりも多いピルです。
低用量ピルよりも多量のエストロゲンが含まれているため、高い効果に期待が持てる一方で副作用のリスクが高い特徴があります。
中用量ピルの服用で生理がこない原因
中用量ピルの服用で生理がこない原因を詳しく解説します。
中用量ピルを服用すると生理がこなくなる場合がありますが、原因を知り不安を解決しておきましょう。
休薬期間は生理がこない
中用量ピルの休薬期間は、生理がこなくなります。
休薬期間は文字通り、ピルを飲まない期間のことです。
中用量ピルは基本的に継続して服用しますが、自然周期と同様の生理を作るためにピルの服用を中止する休薬期間が設定されています。
ピルを服用すると卵巣は眠った状態が続きますが、休薬すると卵巣は再度活動を開始します。
また、ピルには子宮内膜を薄くする作用があるため経血量が減り、中には経血量がゼロになる方もいるようです。
言い換えればピルが効いている証拠でもあるため、過度に不安を覚えずに服用を継続しましょう。
消退出血
中用量ピルを服薬すると、消退出血と呼ばれる普段よりも軽めの生理が起こります。
一般的に消退出血は休薬期間の2日目または3日目あたりに生じ、約5日で終了します。
消退出血が来ない場合、休薬期間の日数を間違えていたり休薬期間中であるにもかかわらずピルを服用しつづけていたりする場合があるため、あらためて周期を見直しましょう。
破綻出血
中用量ピルを服薬すると、破綻出血と呼ばれる副作用が起こる場合があります。
破綻出血はピルによる女性ホルモンの影響で子宮内膜が剥がれ落ちて起こる不正出血です。
ピルを飲み始めたばかりで体が慣れていない場合によく見られる現象ですが、基本的には消退出血と同様のタイミングで出血が起こります。
ピルの服用を継続すると症状が改善しますが、血塊が出たり10日以上の出血が見られたりする場合には担当医師へ相談しましょう。
妊娠
中用量ピルを服薬しているにもかかわらず、消退出血や破綻出血が起こらない場合、妊娠の可能性が考えられます。
避妊目的で中用量ピルを服用しても、100%避妊できるわけではありません。
ピルを飲み忘れた日や休薬期間の前後に性行為をした場合、妊娠する可能性が高くなります。
出血が起こらないほかにも妊娠初期に見られる妊娠の兆候がある場合、一度担当医師へ相談してみてください。
経血量の減少
中用量ピルを服用すると子宮内膜が普段よりも薄くなるため、一般的には経血量が減少します。
体質にもよりますが、中には経血量がゼロになる方もいます。
言い換えればピルが効いている証拠でもあるため、過度に不安を覚えずに服用を継続しましょう。
中用量ピルの服用で生理がこないときの対処法
中用量ピルの服用で生理がこないときの対処法を詳しく解説します。
自身の症状と照らし合わせながら、適切な方法を実施しましょう。
中用量ピルの服用を継続
妊娠の可能性がない場合には、基本的に中用量ピルの服用を継続しましょう。
休薬期間中に消退出血が起こらないケースは稀ですが、体質による個人差もあります。
消退出血が来なくて不安な方は、中用量ピルの処方を受けた医療機関に相談してみてください。
クリニックを受診
中用量ピルの服用で生理がこなくて不安な場合、クリニックを受診しましょう。
中用量ピルを毎日正しく服用できているにもかかわらず消退出血が見られない場合、クリニックで原因を調べてもらうことをおすすめします。
医師の判断により血液検査や超音波検査などをおこない、原因を特定するケースがあるでしょう。
とくにピル服用中に性行為をした方やピルの飲み忘れがある方など、妊娠の可能性がある場合はクリニックで妊娠検査を実施してもらうことをおすすめします。
また、自身で妊娠検査薬を使用して陽性反応が出ている場合でも、なるべく早くクリニックを受診してください。
中用量ピルの効果
中用量ピルには生理日の移動や避妊など、さまざまな効果があります。
中用量ピルを使用する場合、自身の症状にあわせて活用してみてください。
生理日移動
中用量ピルは生理日の移動に用いられることがあります。
生理日を移動したい場合、早めたいのか遅らせたいのかにより服用のタイミングが異なってくるでしょう。
生理を早めたい場合は、生理予定日から5日以内に中用量ピルを最低10日間服用し、一方で生理を遅らせたい場合には、生理予定日の5日前から生理を遅らせたい日まで中用量ピルを服用します。
服用のタイミングを誤ったり服用期間が短すぎたりすると生理日の移動に失敗する可能性もあるため、中用量ピルは余裕を持ち、クリニックで処方してもらうことをおすすめします。
避妊効果
中用量ピルは避妊目的でも使用が可能です。
ただし、生理日移動を目的とした場合の服用方法とは異なるため、飲み方には注意しましょう。
中用量ピルのプラノバールは元々、ヤッペ法と呼ばれる緊急避妊方法に用いられていました。
ヤッペ法では性交後72時間以内に中用量ピルを2錠、12時間後に2錠、計4錠服用します。
アフターピルに比べて薬剤コストを抑えられますが、吐き気をはじめとする副作用が強くあらわれるデメリットもあるので注意してください。
また、中用量ピルを継続して服用する避妊方法では、一般的に服用開始から1週間ほどで避妊効果を得られるといわれています。
ただし、ピルに含まれるホルモン量が多く副作用が起こる可能性が高いため、副作用が辛い方は低用量ピルの服用も検討してみましょう。
子宮内膜症の治療
中用量ピルは、子宮内膜症の治療にも用いられています。
子宮内膜症は、本来子宮の内壁に存在している子宮内膜が子宮の外で増えてしまう病気です。
妊娠が起こらない場合、子宮内膜は月に1回剥がれ落ち、生理となり出血します。
子宮内膜症は主に痛みと不妊が症状としてあらわれるため、生理痛がひどい方で婦人科系の疾患を検査して見つかるケースがあるでしょう。
中用量ピルには子宮内膜を薄くする効果があるため、ピルの服用により子宮内膜症の症状を軽減させたり予防したりできます。
月経困難症の治療
中用量ピルは、月経困難症の治療にも用いられています。
月経困難症は、生理時の経血量の多さや頭痛、生理痛や倦怠感など生理に伴いあらわれる症状です。
中用量ピルの服用により排卵が抑制されるため、生理時にあらわれるさまざまな症状の軽減に期待が持てます。
不妊治療
不妊治療の一環として、中用量ピルが用いられるケースもあります。
避妊目的でも使用できる中用量ピルですが、服用を続けると卵胞ホルモンであるエストロゲンの働きで子宮内膜を成長させて、妊娠しやすい状態に子宮を整えることができます。
不妊治療で中用量ピルを使用する場合、卵胞の大きさを整えたり受精卵の着床をサポートしたりする目的があるためです。
排卵後に中用量ピルを服用すると子宮内膜が厚くなるため、子宮内が受精卵が着床しやすい状態になります。
また、体外受精をおこなう場合には、通常周期の排卵を一旦休ませてから成熟した卵子を採卵するために中用量ピルが使用されるケースがあります。
中用量ピルは服用するタイミングにより避妊と妊娠、真逆の効果があるため、自身の目的にあわせて正しく使用しましょう。
中用量ピルの副作用
中用量ピルには、吐き気やむくみなどの副作用が認められる場合があります。
中用量ピルを服用する前に、起こりうる副作用についても把握しておくと安心です。
吐き気
中用量ピルを服用すると、吐き気があらわれる場合があります。
吐き気があらわれる原因は、中用量ピルにより体内の女性ホルモンの量が急激に変化するためです。
吐き気の対策として、中用量ピルと一緒に吐き気止めも処方してもらうことをおすすめします。
一般的には中用量ピルの服用継続により吐き気は徐々に軽減しますが、症状が続く場合には担当医師に相談してみてください。
また、吐き気の症状が辛い場合には、中用量ピルよりもホルモン量が少ない低用量ピルの服用を検討してみましょう。
むくみ
中用量ピルの服用により、むくみが生じやすくなるケースもあります。
むくみがあらわれる原因は、中用量ピルに含まれる女性ホルモンの作用です。
体内の女性ホルモン量が変化すると体内の水分量が増えてむくみやすくなりますが、ピルの服用をやめると元に戻るため過度な心配は必要ありません。
血栓症
中用量ピルの服用により、血栓症のリスクもあるため注意が必要です。
血栓症は、血が固まることで作られた血栓が血管を詰まらせる症状を指します。
血栓症は喫煙者や高血圧、糖尿病などを持つ方に起こりやすいため、場合により中用量ピルが服用できないケースもあります。
血栓症のリスクを事前に知るためにも、中用量ピルの服用前に一度担当医師に相談しておくと安心です。
中用量ピルについてのよくある質問
中用量ピルについてのよくある質問について、項目ごとに解説します。
- 長期間服用しても健康に害はない?
- 中用量ピル服用時に経血の量は変わる?
- 不正出血が起こった際の対処法は?
中用量ピルに対する不安を払拭するためにも、ぜひチェックしてみてください。
長期間服用しても健康に害はない?
中用量ピルを長期間服用しても、健康に害はないと考えられています。
ピルは体内の女性ホルモン量を調整して排卵を抑制する効果があるため、服用を中断すれば排卵周期も元に戻ります。
ピルの服用により健康を害したり、妊娠しにくい体になったりはしません。
ただし、一部の医療機関では中用量ピルを長期間服用する場合、血栓症のリスクを確認するために定期的な検査を必要としているケースもあります。
中用量ピル服用時に経血の量は変わる?
中用量ピルを服用すると、一般的には経血量が少なくなります。
中用量ピルの服用により体内の女性ホルモンが変化し、子宮内膜が薄くなるためです。
したがって、経血量が通常よりも少なくなり、中には生理痛が軽減する場合もあります。
不正出血が起こった際の対処法は?
中用量ピルによる不正出血が起こった場合でも、3か月ごろまではピルの継続服用が推奨されています。
中用量ピルを服用した方の20%は、体内のホルモンバランスの変化により不正出血が起こります。
不正出血はピルに体が慣れていないために起こる症状ですが、ピルの服用を続けていると出血は自然に解消されるでしょう。
ただし、服用開始から4か月を過ぎても出血が見られる場合にはピルの影響ではなく、病気が隠れている場合もあるため早めに医療機関を受診してください。
まとめ
中用量ピルは、月経トラブルの改善や避妊目的で服用される薬です。
現在、日本で取り扱いのある中用量ピルの種類はプラノバールのみです。
プラノバールの相場は5,000円から8,000円ですが、月経移動や避妊目的の場合は保険が適用されない自費診療となるためクリニックごとに料金も異なります。
中用量ピルは、低用量ピルよりも多量のエストロゲンが含まれているため、高い効果に期待が持てる一方で副作用のリスクが高い特徴があります。
また、中用量ピルを服用すると生理がこなくなる場合がありますが、大半はピルの作用による経血量の減少です。
ただし、中用量ピルを服薬しているにもかかわらず、消退出血や破綻出血が起こらない場合、妊娠の可能性も考えられます。
避妊目的で中用量ピルを服用しても100%避妊できるわけではなく、ピルの飲み忘れや休薬期間の前後に性行為をした場合、妊娠の可能性が高まります。
生理がこないほかにも妊娠の兆候がある場合、一度担当医師へ相談してみてください。
自身で妊娠検査薬を使用して陽性反応が出ている場合でも、なるべく早くクリニックを受診してください。
また、中用量ピルにより吐き気やむくみなどの副作用が認められる場合もあるため、服用前に起こりうる副作用についても把握しておきましょう。
自身に起こりうる副作用のリスクを知るためにも、中用量ピルの服用前には一度担当医師に相談しておくと安心です。
〈参考〉
ネオクリニック公式サイト