アフターピルは「避妊に失敗した」「コンドームを使用しない性行為を強制された」などの理由による望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬です。
性行為から一定時間内に服用すれば高い避妊効果が期待できますが、副作用が出る可能性もあります。
本記事では、アフターピルの仕組みや効果、服用方法、副作用などについて解説します。
アフターピルを使う機会がないに越したことはありませんが、知識を身につけて損はありません。
もしものときに適切な行動をとるためにも、ぜひ参考にしてください。
アフターピルとは?
アフターピルとは、望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬です。
「避妊に失敗したかもしれない」「性犯罪に巻き込まれてしまった」など、妊娠の可能性がある性行為後に服用します。
性行為後の妊娠を防止する緊急避妊薬
避妊に失敗したとき、性犯罪に巻き込まれたとき、多くの女性が妊娠したらどうしようと不安を感じるでしょう。
アフターピルは、妊娠の可能性がある性行為から一定時間内に服用する緊急避妊薬です。
黄体ホルモンと呼ばれる女性ホルモンを含有するアフターピルには、排卵の抑制や受精卵の着床を阻害する効果があります。
アフターピルの効果を十分発揮するためには、摂取するタイミングが非常に重要です。
性行為からアフターピル摂取までの時間が短ければ短いほど、避妊成功率は上がります。
避妊が成功した場合、早ければ3日程度、遅くても3週間前後で消退出血と呼ばれる出血が起こります。ただし、アフターピルの避妊成功率は100%ではないため注意が必要です。
アフターピルは日常的に服用する薬ではありません。緊急時の最終手段の一つとして捉えましょう。
時間経過別の避妊成功率
アフターピルは主に3種類あります。種類ごとの時間経過別避妊成功率は次のとおりです。
ヤッペ法 | ノルレボ | エラワン | |
---|---|---|---|
24時間以内 | 約77% | 約99% | 約99% |
48時間以内 | 約36% | 約98% | 約98% |
72時間以内 | 約31% | 約97% | 約97% |
120時間以内 | 約95% |
ヤッペ法は、時間経過に伴い避妊成功率が急下降します。ノルレボ、エラワンはどちらも高い避妊成功率を維持していますが、時間経過とともに少しずつ下がります。
アフターピルの効果を十分得るためには、性行為後なるべく早く服用しましょう。
婦人科に行く時間がない、夜間や休日も対応している産婦人科が見つけられないときは、オンライン診療を受診する選択肢もあります。
オンライン診療は、産婦人科で診療を受けることに抵抗がある方にもおすすめです。
妊娠を希望していない場合は、避妊成功率を高めるためにも迅速に行動しましょう。
参照元:「アフターピルの値段(費用)相場を比較│前川クリニック (maekawa.clinic)」
アフターピルで避妊できる仕組みと効果
アフターピルには、次のような効果があります。
- 排卵を抑制する
- 受精卵の着床を阻害する
それぞれの仕組みについて詳しく紹介します。
排卵を抑制する
妊娠するまでの流れは、排卵後の卵子と射精後の精子が受精→受精卵が子宮に着床となります。そのため、排卵が起きなければ妊娠は成立しません。
アフターピルを服用するタイミングが排卵前だった場合、排卵の抑制は避妊に非常に効果的です。アフターピルで排卵を抑制できる期間の目安は、5日~7日程度です。
一方で、精子が女性の体内で生きていられる期間の目安は、3日(72時間)とされています。
排卵を抑制している間に精子は受精能力を失うため、高い避妊効果が期待できます。
参照元:「【医師監修】妊娠の流れ(排卵から着床までの日数)と妊娠しやすいタイミング | 医師が作る医療情報メディア【medicommi】」「アフターピルの効果と避妊の仕組みとは?医師が詳しく解説します | Emishia Style(エミシア スタイル) │ 渋谷エミシアクリニックが公式でお届けする美容総合メディア (emishia-clinic.jp)」
受精卵の着床を阻害する
アフターピルを飲むタイミングが排卵後でも、避妊効果はあります。
仮に卵子と精子が受精した状態でも、受精卵が子宮に着床できなければ妊娠は成立しません。
受精卵が着床するためには十分な厚みのある子宮内膜が必要になりますが、アフターピルにより子宮内膜の増殖が抑制されます。
子宮内膜の増殖が抑制された状態では、受精卵は着床できません。妊娠が成立しなかった受精卵は、剥がれ落ちた子宮内膜とともに出血として排出されます。
アフターピルの種類と服用方法
次の3種類のアフターピルについて紹介します。
- ヤッペ法
- ノルレボ
- エラワン
それぞれの違いは次のとおりです。
ヤッペ法 | ノルレボ | エラワン | |
---|---|---|---|
服用方法 | 1回2錠服用 12時間後に再度2錠服用 | 1回1錠 | 1回1錠 |
服用時間 | 72時間以内 | 72時間以内 | 120時間以内 |
費用相場 | 3,000円前後 | 10,000円前後 | 15,000円前後 |
メリット | 安く購入できる | 副作用が少ない 厚生労働省に認可されている | 避妊成功率が高い 服用可能時間が長い |
デメリット | 副作用が出やすい 服用回数、錠数が多い | 服用時間に72時間の制限がある | 副作用が出やすい |
参照元:「アフターピル – MEDIAGEメディアージュクリニック青山院」
ヤッペ法
ヤッペ法の場合、性行為から72時間以内にまず2錠服用します。つぎに、1度目の服用から12時間後に再び2錠服用します。
ヤッペ法の特徴は服用錠数が多いことと、決められた時間に2度目の服用をしなくてはならないことです。
比較的安く購入できますが、副作用が出やすく避妊成功率がほかのアフターピルより低いことから、ヤッペ法を採用しないクリニックも増えてきています。
ノルレボ
ノルレボは、緊急避妊薬として厚生労働省に認可されている安全性の高いアフターピルです。性行為から72時間以内に1錠服用します。
レボノルゲストレルと呼ばれるジェネリック医薬品も開発されており、費用相場は4,000円前後です。
強いてデメリットを挙げると、72時間以内に服用の時間制限があることですが、これはヤッペ法でも同じです。
副作用が少ない、避妊成功率が高い、厚生労働省の認可があるなどの点から、ノルレボを処方するクリニックが増えてきています。
エラワン
エラワンは、ウリプリスタール酢酸塩と呼ばれる成分が30mgも配合された超高用量ピルです。性行為から120時間以内に1錠服用します。
性行為から服用までの日数に余裕があることと、避妊成功率が高いことがメリットですが、日本では未承認のアフターピルです。
有効成分の含有量が多いため、ほかのアフターピルより副作用が出やすい可能性があります。
アフターピルの主な副作用
アフターピルを服用すると、副作用が出る可能性があります。主な副作用や対処法を紹介します。
参照元:「アフターピルで避妊ができる仕組みを解説! | プライベートクリニック高田馬場 (private-clinic.jp)」
副作用の主な症状
アフターピルを服用すると、一時的にホルモンバランスが崩れるため次のような副作用が出る可能性があります。
- 吐き気
- 嘔吐
- 眠気
- めまい
- 頭痛
- 下痢
- 出血
アフターピルの副作用として多いのは吐き気です。吐き気のみならそこまで心配いりませんが、嘔吐する場合は注意が必要です。
アフターピルの成分が体内に吸収されるまでには2時間ほどかかるため、服用から2時間以内に嘔吐した場合は本来の避妊効果を得られない可能性があります。
吐き気止めもあわせて処方するクリニックもあるため、不安な方は医師に相談するとよいでしょう。
もし2時間以内に嘔吐した場合、アフターピルの再服用が必要な場合があります。
服用しているアフターピルの種類や、服用から嘔吐までの時間などにより臨機応変な対応が必要なため、自身で判断せず医師に連絡し判断してもらいましょう。
ホルモンバランスの乱れにより眠気、めまい、頭痛などの症状が出る場合もあります。日常生活に影響が出るようなら、無理せず体を休めましょう。
アフターピルに含まれる成分は胃や小腸から吸収されるため、下痢をしても排出されることはありません。脱水症状にならないよう、水分を取り安静にしましょう。
アフターピル服用後は出血が見られる場合もあります。茶色い出血が2~3日でおさまるようなら心配いりませんが、鮮血が長期間続く場合は医師に相談してください。
24時間以内にほぼおさまる
つらい副作用が続くと不安が募るでしょう。しかし、大抵の副作用は服用から数時間で現れはじめ、24時間以内におさまります。
そのため、アフターピルを服用する日はなるべく安静に過ごしましょう。
アフターピルは吐き気止め、頭痛薬、胃腸薬などと併用できます。つらいときは無理せず症状にあう薬を飲むとよいでしょう。
24時間経過しても症状がおさまらない、悪化するなどの場合は我慢せずに医師に相談してください。
アフターピルを服用するときの注意点
アフターピルを服用するときの注意点は、次のとおりです。
- 低用量ピルの服用・コンドームの使用で避妊をする
- 個人輸入せず病院で処方してもらう
- 生理予定日を過ぎても出血がない場合は妊娠検査薬を使用する
それぞれ解説します。
低用量ピルの服用・コンドームの使用で避妊をする
繰り返しになりますが、アフターピルの避妊成功率は100%ではありません。
アフターピルがあるからと安心せずに、妊娠を希望していない場合は低用量ピルを服用したりコンドームを使用したりして自主的に避妊するようにしましょう。
低用量ピルを正しく服用したときの避妊成功率は約99.7%で、アフターピルよりも高い数値となります。
コンドームも、正しく使用すれば約98%の避妊効果があるといわれています。
望まない妊娠をより高い確率で防ぐためにも、低用量ピルの服用、コンドームの使用による避妊を心がけましょう。
参照元:「【産婦人科医監修】ピルの避妊効果は約99.7%! 男性の避妊は不要なの? (mederi.jp)」
個人輸入せず病院で処方してもらう
海外で出回るアフターピルは、粗悪品や偽薬である可能性があります。安全性の確認が難しいため、個人輸入はしないでください。
海外製品は日本で処方されているアフターピルよりも安く購入できる場合がありますが、有効成分が適量配合されていなければ避妊効果は期待できません。
また、輸入だと注文から到着まで時間がかかる場合がありますが、アフターピルは性行為後なるべく早く服用する必要がある緊急避妊薬です。
薬が届くのを待つ間に適切な服用タイミングを逃すと避妊効果は期待できないため、個人輸入はやめましょう。
日本でアフターピルは市販されていないため、購入するためには病院で処方してもらう必要があります。医師の診察を受け、安全性の高い正規品を購入しましょう。
病院に行くのは抵抗がある方、病院に行く時間が取れない方、休日や夜間で対応している病院が見つからない方はオンライン診療がおすすめです。
都合にあわせて適切な処方先を選んで、安全に服用しましょう。
生理予定日を過ぎても出血がない場合は妊娠検査薬を使用する
アフターピルを服用すると、早くて3日程、遅くても3週間程で消退出血と呼ばれる出血がみられることがあります。
消退出血は避妊が成功したサインとして捉えられていますが、副作用の一つのため症状が出ない方もいます。「出血がないから妊娠した」と決めつけなくても大丈夫です。
しかし、生理予定日を1週間以上過ぎても出血がない場合は、念のため市販の妊娠検査薬を使用しましょう。
適切な検査時期よりも早くに妊娠検査薬を使用しても、正しい結果は得られません。
アフターピルによるホルモンバランスの乱れで生理周期が変わる可能性もあるため、生理予定日から1週間は様子をみましょう。
アフターピルに関してよくある質問
最後に、よくある質問と回答を3つ紹介します。アフターピルを使用する際の参考にしてみてください。
未成年でもアフターピルを処方してもらえる?
アフターピルに年齢制限はないため、未成年でも購入可能です。ただし、処方しているかはクリニックにより異なります。
保護者の同意書なしで処方しているクリニックもあれば、同伴が必要なクリニックもあります。中には未成年には処方していないクリニックもあるため、購入の際は事前に確認しましょう。
アフターピル服用後に吐いたらどうすべき?
服用から2時間以上経過してからの嘔吐なら、問題ありません。
服用から2時間以内の嘔吐だと、アフターピルの成分が体内に吸収されず吐き出されている可能性があり、再服用が必要になる場合があります。
服用時間と嘔吐した時間を確認し、必要があれば医師に相談しましょう。
保険証なしでアフターピルを処方してもらえる?
アフターピルは保険適応外治療のため、保険証なしで処方してもらえます。
自由診療となるアフターピルはクリニックや病院ごとに値段設定が異なり、全額自己負担となります。
まとめ
アフターピルは、避妊に失敗したときや性犯罪に巻き込まれた際、望まない妊娠を防ぐための緊急避妊薬です。
ただし、必ず避妊できるわけではありません。妊娠を望んでいない場合は、日頃から低用量ピルやコンドームを使用しましょう。
性行為から服用までの時間が短ければ短いほど避妊成功率は高いため、迅速な行動が必要になります。
排卵の抑制、受精卵の着床阻害の効果があるアフターピルを服用すると、ホルモンバランスの乱れにより一時的にさまざまな副作用が出る可能性があります。
大抵は24時間以内におさまりますが、よくならない、体調が悪化する場合はすぐに医師に連絡しましょう。
あくまでアフターピルは緊急時の最終手段と捉え、日常的な使用はやめましょう。
※本記事の情報は2023年7月時点のものです。
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