低用量ピルは避妊(ひにん)を目的としたお薬であり、正しく使用すると約99%妊娠を避けることのできる薬です。表にいろいろな方法による避妊率を示します。

表に示すように低用量ピルの避妊率はかなり高く、正確に飲むことができればほぼ100%の避妊率になります。当院では積極的に低用量ピルを処方し、望まない妊娠をさけることをお勧めしています。低用量ピルには副効用(避妊以外にみとめられる効果)がたくさんあります。

定期的に内服することで生理の状態が良くなったり、生理量が少なくなることで生理周辺の時期に快適に過ごすことができるようになります。内膜症の診断を受けた場合には、進行抑制効果が期待できますし、内膜症の手術を受けた方は再発防止になります。生理不順で困っている方は28日できっちり来ることが多くなりますので、仕事や旅行などの予定も組みやすくなります。生理前のイライラや頭痛が良くなることで生活の改善にも役立ちます。また、ニキビなどで困っている方も多くの方が改善します。このように避妊目的のピルにも様々な副効用があり、それを得られることが大きなメリットとなります。一方で性感染症の予防には効果がありません。最近では性感染症のリスクの高い女性においてクラミジア感染のリスクが高いと報告されています。(OC・LEPのガイドライン2015より)一方で、HIV感染を含めその他の性感染症とピルの内服の間に関連があるとはいえないという報告もあるようです。(OC・LEPのガイドライン2015より)これらの感染症を防ぐためには低用量ピルとコンドームの併用をお勧めしています。また、このような感染症を早期に見つけるために定期的な検査を行っています。生理痛がある方は保険収載されたLEP製剤(基本的には避妊用の低用量ピルと同じですが保険が効きます)が適応になりますので次項で説明いたします。

ピルに関するQ&A

Q1:避妊用の低用量ピルとLEP製剤は何が違いますか?

A:避妊用の低用量ピルは避妊を目的として使用され、一方、LEP製剤は月経困難症(生理痛や生理の量が多い、内膜症による症状)を良くするために使用します。薬剤により細かい差はあるものの、効果は基本的に同じです。

Q2:いつから内服したらよいですか?

A:生理開始日を1日目として、3~5日目に内服開始してください。少なくとも内服開始後7日間は性交症を避けていただくことが重要であり、安定して内服ができるまでは(少なくとも1シート飲む間は)コンドームなどとの併用をお勧めします。

Q3:内服を忘れた場合にはどのようにしたらよいですか?

A:1錠の飲み忘れの場合には、飲み忘れた錠剤をなるべく早く内服し、残りの錠剤は予定通り内服してください。2錠以上飲み忘れた場合には、飲み忘れた錠剤のうち近いものをなるべく早く内服し、残りの錠剤を予定通りに内服し、7錠以上飲むまでは性交渉を避けるもしくはコンドームなどの避妊を併用することをお勧めします。低用量ピルの避妊失敗例の多くは飲み忘れによることが多いですのでご注意ください。

Q4:他の薬と低用量ピルの飲み合わせが悪いものはありますか?

A:向精神薬 三環系抗うつ薬の作用が強くなることがあります。精神科や心療内科の先生と相談し、薬の量を調整する必要性があります。

(三環系抗うつ薬:イミドール、トフラニール、アナフラニール、スルモンチール、アンプリット、アミトリプリプチン、トリプタノール、ノリトレン、プロチアデン、アモキサン、テシプール、セチプチリンマレイン酸)

抗てんかんの薬、抗結核薬、抗HIV薬などの薬の効果が弱くなることがあります。これらのお薬を長期にのむ場合には低用量ピルは使用しにくいです。

Q5:がんの発生率は変わりますか?

A:発生率が低下するがん 子宮体がん、卵巣がん、大腸がん

  1. 子宮体がん:子宮体がんはエストロゲンの影響により悪化すると考えられますが、低用量ピルに含まれるプロゲステロンにより子宮体がんの発生率は約50%低下すると考えられています。また、内服中止後も体がんの危険性が低下すると考えられます。
  2. 卵巣がん:卵巣がんの発生には継続する排卵やゴナドトロピンやアンドロゲンというホルモンの過剰、炎症が関わると考えられています。低用量ピルを内服すると排卵しなくなるため卵巣がんになりにくくなります。いくつかの報告をまとめると25~28%の割合で卵巣がんの発生が抑えられるようです。また5年間低用量ピルを内服すると卵巣がんの発生率は内服していない方と比較して20%程度になります。症例数は少ないですが、遺伝性卵巣がんでも低用量ピルの内服により卵巣がんの発生率が低下します。
  3. 大腸がん:大腸がんも低用量ピルに含まれるエストロゲンの影響によりリスクが低下します。

 発生率が上昇するがん 乳がん、子宮頸がん

  1. 乳がん:乳がんと低用量ピルに関する報告はたくさんあるようです、まとめると乳がんの発生率は低用量ピルの内服で20%前後上がるようです。当院では内服前の乳がん検診および1年ごとの乳がん検診をお勧めしています。乳がんにかかっている方は、原則低用量ピルは飲むことができません。家族の中に乳がんの患者さんがいる方も注意が必要です。
  2. 子宮頸がん:20歳から30歳まで低用量ピルを10年間内服すると50歳までの子宮頸がんの発症率が先進国で3.8人から4.8人(1000人当たり)、発展途上国で7.3人から8.3人(1000人当たり)に増加しました。当院では子宮頸がんの検診を内服前と内服中1年ごとに行っています。また、子宮頸がんのリスクであるHPV感染を予防するためにHPVワクチンの予防接種を受けることをお勧めします。低用量ピル内服中は特に子宮頸がん検診とHPVワクチン接種の併用が重要であると考えます。

Q6:血栓症はどのくらいの確率で起こりますか?

A:血栓症(血管の中に血のかたまりができる病気)は低用量ピルの内服によっておこる副作用の一つです。内服後3か月以内が最も多く、10000人のうち14.3人です。その後は減少する傾向にあり、内服2年目で7.3人/10000人、3年目で6.3人/10000人となっています。血栓症の病歴がある方や遺伝的に血栓になりやすい方、高度の肥満の方、喫煙数が多い方などは注意が必要です。

Q7:血栓症はどのような症状がでますか?

A:表に示すような症状が出ることが多いです。ACHESという症状の頭文字をとって表現することがあります。このような症状が出た場合には当院へご連絡ください。緊急検査のできる大学病院などの施設へご紹介する場合があります。

Q8:普段の生活で気を付けることはありますか?

A:低用量ピルを内服している間に、飛行機などの狭い空間に長時間いると血栓症が起こりやすくなります。長時間のフライトになるときは水分を多くとる、お酒などを飲みすぎない、体をなるべく動かすなどの対応をすると良いと思います。