月経期間中に月経にともなっておこる病的な状態を月経困難症といいます。
下腹部痛、腰痛など一般に月経痛とよばれる症状に加え、月経量が多い、おなかのはる感じ、吐き気、頭痛、疲労感、脱力感、食欲不振、下痢などがあります。
広い意味ではいわゆるPMSとよばれる生理前の頭痛やいらいら、憂鬱などの症状も含みます。

月経困難症の分類

月経困難症には原因疾患(原因となる病気)の有無により2つに分類されます。
原因の病気がなくてもおこる月経困難症を機能性月経困難症とよびます。
初経後1~2年で始まることが多いです。
原因疾患はありませんが、痛みの理由は以下のような原因が挙げられます。

  • プロスタグランジンという痛みのホルモンが多く出る
  • 子宮の入り口が狭い
  • 心理的要因
  • 運動不足や冷え

思春期女性はこの機能性月経困難症が多いです。
一方、器質性月経困難症では子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫が原因となります。
思春期でも持続する月経困難症の中で25~73%に子宮内膜症があると報告されています。
成人とは異なりチョコレート嚢腫という卵巣の腫れが少ないのも特徴です。

月経困難症の検査

これらの原因があるかないかを見分けるために必要な検査に超音波検査があります。
超音波検査には3種類の方法があります。

  • 1)経腹
  • 2)経腟
  • 3)経肛門

産婦人科領域で子宮や卵巣を確認するためには 2)経腟超音波 が最も有効です。
1)経腹超音波は内科的な肝臓や腎臓などを見るためには有効ですが、婦人科疾患の微妙な診断をつけるのにはあまり向いていません。

また、女性の場合には体脂肪が多いですから、超音波のビームが子宮や卵巣に届きにくいという欠点があります。
ですから婦人科疾患を有効に診断するには 2)の経腟超音波が有効です。

一方で性交渉の経験のない方には 2)の経腟超音波 は行わないことが多いです。検査時に痛みを伴ったりするためです。
性交渉の経験のない方には 1)経腹超音波か 3)経肛門的な超音波を行います。

この2種類を比較すると 3)経肛門 の方が婦人科臓器を評価しやすいです。
できれば 3)経肛門 を行う方が良いとされています。
もちろん痛みが伴うこともありますから、途中でやめることはできますし、撤退することもできます。

痛みがほとんどない場合も多いのでできれば 3)経肛門 で検査をさせていただければより多くの情報が得られることになります。
特に思春期では月経困難症の原因に子宮奇形や先天異常も隠れていることもありますので超音波検査は非常に重要になります。

一方で、客観的に写真で評価する検査にMRIがあります。
MRIは超音波に比べると時間的に検査時間がかかる、経済的な負担がある、他施設で検査しなければならないなどの欠点もありますが、痛みなどはありません。
狭いところが苦手な方や金属が体内にある方、ペースメーカー挿入、アートメイクなどを行っている方は施行できませんので注意が必要です。

なお、子宮筋腫、内膜症、子宮腺筋症が疑われる場合には追加の検査や治療が必要になることもあります。

治療

月経困難症の治療には痛み止め、低用量ピルなどがあります。

  • 痛み止め
    月経痛を我慢する必要はなく、月経開始とともに激しい痛みが毎回出現する場合には痛み止めを月経開始とともに服用することが重要です。
    また座薬は即効性もあり、激しい痛みの改善に有効であることが多いです。
    しかし、月経困難症の20~30%には痛み止めが無効であることがあります。
  • 低用量ピル
    低用量ピルはもともと避妊で使用されていた薬ですが、現在月経困難症には保険適応があります。
    また避妊効果以外の副効用がたくさんあり、この効果を利用して月経困難症を改善させます。
    生理痛を軽減することから、生理量の減少ものぞめます。
    生理不順や排卵痛の改善、ニキビの改善にも有効です。
    当院で月経困難症の方に低用量ピルを処方し、3か月後に評価すると1~2/10になっていることが多いです。
    ただ個人差もありますので3~5/10の方もいます。
    月経困難症でお困りの場合にはまずはトライしてみることが大切かもしれないです。
    また、低用量ピルで月経を土日にあてないなどの工夫もできますので、大切な試験や試合などへの応用もできます。

思春期と月経困難症

思春期女性の47%から80%に月経困難症がみられるという報告があります。
また月経困難症をもつ思春期女性の51%が少なくとも1回は疼痛のために学校や仕事を休んでいるという報告があります。
さらに8%が毎回の月経ごとに休んでいるという報告があります。
いずれにしても思春期女子の日常生活に支障をきたす症状であり、
それが人生にとって大切な試験やスポーツの大会であればなおさら重要になってくるのです。
思春期の月経困難症はほとんどが機能性月経困難症です。
特に思春期では心理的要因である不安や緊張などに起因することも多いといわれています。
また、近年の中高生の成功経験率は増加しており、クラミジア感染の増加により、これによる月経困難症も多くなっています。
また従来思春期では少ないとされてきた子宮内膜症による月経困難症も増加してきています。

治療の流れ

  1. 生理の状況、様子、痛みの程度など看護師が診察前に情報収集を行います。
  2. 医師より月経困難症の説明があり、基本的な事項を理解していただきます。
  3. 低用量ピルの副効用などについて医師より説明し、どのように低用量ピルが役に立つか説明します。
  4. 次に診察になります。月経困難症が機能性か器質性かを見分けるために超音波を行います。
    器質性の月経困難症の場合には特殊な治療や手術の説明を行うこともあります。
  5. 癌検診を行います。若い年齢の方には子宮頚癌の検査を行い、40歳を過ぎている方や子宮内膜が厚い方などは子宮体癌の検査も併用します。
    (横浜市在住の方は2年おきに癌検診の補助があります。特にチケットなどは必要ありませんので2年の間に市の検診を行っていない方は市の検診で行います。保険の場合にも金額的には大きな差はあまりありません。)
  6. 採血検査を行います。基礎的な採血(一般採血、腎機能や肝機能チェック)とホルモン異常がないことなどを確認します。
  7. 1週間後に検査結果を確認し、子宮癌や卵巣癌がないことを確認します。また採血結果を確認し、低用量ピルを開始できないような病気の方を除外します。
  8. 医師から副作用の説明を行い、理解していただきます。
  9. 看護師からチェックリストの表が渡され、たばこを多く吸っている方、体重がかなり重い方、その他の合併症がある方を除外させていただきます。
  10. 20分程度低用量ピルの内服方法や飲み忘れの対応などの注意点について丁寧に説明します。

よくある質問

  1. Q1:不妊症になるか心配です。
    低用量ピルを飲んでも不妊症にはなりません。
    お薬を飲んでいる間は妊娠できませんが、飲むのをやめると元の状態に戻ります。
    低用量ピルを飲むことで将来妊娠できなくなることはありません。
    一方、生理不順などで低用量ピルを飲んでいる方はそもそも不妊との関連が示唆されますのでご注意ください。
  2. Q2:中学生や高校生で低用量ピルを服用しても問題ありませんか?
    WHOの規定では、初潮を迎えた後は問題ないとされています。
    ただし、骨の成長がまだ十分でない場合には身長が伸びにくくなることがあります。
    当院では個々の症例で相談することにしています。
  3. Q3:副作用は大丈夫ですか?
    飲み始めの特に3か月に副作用が多いです。
    吐き気や頭痛などがあり、また血栓症などの重篤な合併症も3か月までに多いです。
    厳重な管理を行い、経過を見ることが重要です。
    医師を介さないネットなどの処方では十分に症状の管理ができないことが多いです。
    受験などでピルを飲む場合にはできれば半年前から調整することをお勧めします。
    12月になると入試前の相談をされる方がいますが、できれば余裕をもって1年前くらいに相談していただく方が良いでしょう。
  4. Q4:受験などの場合には注意が必要ですか?
    低用量ピルで月経困難症をコントロールするには少し時間がかかります。
    できれば余裕をもって試験の1年前くらいから調整できると助かります。
    より良い成功をつかむには早めの対応が重要になると考えています。
    特に最初に飲み方の理解や副作用の説明などが重要になります。
    当院では医師の説明の前に看護師が十分な問診を行い、また診察後にもケアを行います。
    低用量ピルの副作用や飲み方の説明も30分近くかけて患者さん個人の状態に合わせて説明しています。
    できればご本人も説明をしっかり理解していただく必要があり、受験勉強などが佳境に入らないシーズンに受診することをお勧めします。