ここのところ HPV ワクチン接種の問い合わせや接種希望の方が多い印象があります。数回にわけて HPV ワクチンのお話をしていきたいと考えています。

HPV と子宮頸がん

子宮頸がんの 95%以上は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。HPV はごくありふれたウイルスであり、性交渉経験のある女性の 50~80%が HPVに感染していると考えられています。
HPV の感染経路は性的な接触によるものが多いとされています。性交渉を経験する年齢になれば男女問わず HPV に感染することがあります。
そしてその感染を起こした女性のうちの一部が数年から数十年かけて子宮頸がんに移行するとされています。

HPV ウイルスとは?

性器に感染するウイルスとしてヒトパピローマウイルス(HPV)が知られていますが、約30 種類あります。 その中でも約 15 タイプ(16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68、73、82 型など)が子宮頸がんに関わる HPV と考えられています。子宮頸がんと最も関連のある HPV は 16 型です。
次いで 2 番目に多いのが 18 型です。それ以外のHPV としては尖圭コンジローマという性病に関わる 6 型と 11 型が有名です。

HPV ワクチンの種類について

現在日本では 2 種類のワクチンが承認されています。一つはサーバリックスという2価のワクチンであり、もう一方はガーダシルという4価のワクチンになります。サーバリックは HPV の 16 と 18 型に対するワクチンで、ガーダシルは 16 と 18 型に加えて尖圭コンジローマの 6 型と 11 型にも効果があるワクチンです。
これらのワクチンは HPV16 型/18 型感染を予防することができるため、60~70%の子宮頸がんを予防することが可能であると考えられています。
100%予防することはできないため、子宮頸がん検診との併用が重要になります。検診は非常に有効であり、前がん病変(一部の初期子宮頸がんを含みます)で診断をつけることができれば小さな手術(子宮頚部円錐切除術)ですむことが多く、一方子宮頸がんの診断であれば広汎子宮全摘出術という婦人科がん領域では最も大きな手術を受ける必要があり、妊娠の可能性がなくなってしまう場合
があります。
2014 年 12 月には 9 価のワクチンが米国で承認されました。HPV16、18、6、11 に加えて発がん性 HPV31 型、33 型、45 型、52、58 型を加えたワクチンです。いまだ日本では承認されておらず、現在 9 価のワクチンが接種できるところは並行輸入されたワクチンです。
まだ日本では承認されていないので、副作用など何かおきても保障が受けられない可能性は高いです。
十分に注意して接種することをお勧めします。

HPV ワクチン接種年齢について

最も推奨される接種年齢は 10~14 歳となっています。(産婦人科診療ガイドライン 2017より)
次に推奨される年齢は 15 から 26 歳となっています。性交渉前に打つことが奨励されています。現在も小学 6 年生から高校 1 年生までは公費で打つことができます。すなわち無料となります。27 歳から 45 歳までの年齢層でもワクチンの有効性が証明されています。
この年齢層でも希望がある方はワクチン接種が可能です。

子宮頸がん検診に関する詳細は下記をご覧ください。

子宮がん検診の特徴と検診の流れ